SDGsは日本語では「持続可能な開発目標」という意味です。私たちはこれまで生活をよくするためにいろいろなモノを作り、開発を行ってきました。そのおかげで日本を含む先進国では、電気や水に困ることがなく、快適な生活をおくることができています。しかしその行動は、木を切り空気や水を汚すなど、自然や他の生物にとってはよくないこともありました。そこで、世界中のさまざまな立場の人たちが、地球を守りながら、地球上のすべての人が平和で豊かな生活を送れるようにするための目標をつくろうと意見を出し合いました。それが国連の会議で採択され、世界の目標になりました。
目標1 貧困をなくそう
世界には生活できなくなるほどの貧しさに苦しむ人が大勢います。中でも極度の貧困状態で暮らす(1日1.9ドル未満で暮らす)人の数は全世界で約7億3600万人(世界人口の約10人に1人)ともいわれており、その多くは南アジアやサハラ以南のアフリカなどの地域に集中しています。
実は日本でも豊かな人と貧しい人の差が開いてきており、身近な問題にもなりつつあります。「病院に行けない」「教育を受けられない」など、他の問題を引き起こすきっかけにもなる貧しさの問題。こうした問題に対するSDGsに取り組むためには、まず自分たちが一日どれくらいのお金で生活しているかを調べてみましょう。そして貧困に苦しむ国の人々を知り、何ができるかを考えてみましょう。
目標2 飢餓をゼロに
SDGsの2つ目の目標は「飢餓をゼロ」にすることです。飢餓とは、食べるものがなく栄養が十分にとれておらず、生きることや生活することが困難な状態のことをいいます。2017年に世界中で暮らす人の数は76億人になりましたが、そのうち約8億2100万人が栄養不足(※1)で苦しんでいるという調査結果がでました。世界の9人に1人が食事をできずに苦しんでいることになります。ではなぜ、飢餓の問題は起こるのでしょうか。
飢餓は、自然災害、貧困、人口増加、森林伐採など、さまざまな理由で起こります。10年以上、飢餓に苦しむ人は減り続けていましたが、2016年からまた増え続けています。この原因は人々の争いや気候変動による洪水や干ばつ、経済の低迷などだと考えられています。(※2)
飢餓の問題に対して私たちができること
好き嫌いをしたり、お菓子ばかりを食べて食事を残してしまったという事、ありませんか? 世界では多くの人が栄養不足で苦しんでいる一方、私たちが暮らす日本では、年間600万トン(※3)以上の大量の食べ物がまだ食べられるのに捨てられています。日本は海外から多くの作物や食料を買っていますので、そうしたムダを無くすことができれば、飢餓に苦しむ人を救うことができるかもしれません。私たちにできること、まずは食べ物を残さないように努力をしましょう。
そして、今食べているものはどこでどういう人が作っているのか、ということに興味を持つことも大切です。現在、飢餓に苦しむ人々の支援をしながら、この先も環境を守りながら続けていける農業の研究が進められています。そうしたことにも目を向けながら、今日からできることを少しでも始めていく、それが目標達成につながるはずです。
出典 : ※1 国連WFP(国際連合世界食糧計画) ※2 FAO(国際連合食糧農業機関)ほか ※3 農林水産省
目標3 すべての人に健康と福祉を
世界では5歳になる前に命を落としてしまう子どもが、1年に530万人(※1)いると言われています。原因の多くは目標2であったような飢餓や貧困にあり、中でも貧しい国の子どもたちが犠牲になっています。
私たちは病気になればお医者さんに診てもらい、治療をしてもらいますが、そうした国で暮らす子どもたちはそうはいきません。病気の予防もできないため、日本でかからないさまざまな病気に感染してしまうこともあります。そこで目標3では、世界中のすべての人が健康に生活できる環境を整えることを目標としています。
お医者さんではないのだから、この目標は自分に関係ないのではと思う人がいるかもしれませんが、そうではありません。病気を予防するための「手洗い」「うがい」をしっかりとし、健康に過ごす。まさに今、新型コロナウィルスの対策のためにみなさんがやっていることと同じです。そうした行動が当たり前のこととして広がっていけば、結果的にたくさんの人の健康を守ることにつながります。
夜更かしや間食をせず生活習慣を正す、ゲームをやり過ぎない、適度に体を動かすなど、健康でいるためにできることもたくさんあります。また目標2と合わせて、健康を保つためにはどんな食べ物が必要なのかなどを考えてみても良いかもしれませんね。
出典 : ※1 unicef(国際連合児童基金)
目標4 質の高い教育をみんなに
日本には「義務教育」という仕組みがあり、小学校や中学校でたくさんの事を学ぶことができます。しかし、学校に行けることは当たり前だと思っていませんでしたか。新型コロナウイルス感染症拡大防止に向け学校の休みが続き、改めて勉強や学校の友だちの大切さを感じた人も多いのではないでしょうか。
現在、世界で学校に通っていない5歳から17歳の子どもたちは約3億300万人(※1)いると言われ、その内の1億400万人は紛争や自然災害に苦しむ国で暮らしています。また、生活を支えるために学校に行きたくても行けない子どもたちもいます。ではなぜ、そうした子どもたちが教育を受ける必要があるのでしょうか。それは未来の生活を良くするためです。
学校で学ぶことは、とても役に立つことばかり。例えば文字を書いたり読んだり、計算したりすることができなければ、大人になっても思うように仕事につけず、生活に困ることがでてくるかもしれません。また、病気にかかったときや、赤ちゃんが生まれたとき、命を守る方法もわかりません。みんなが豊かな生活をおくるために、学ぶことはとても大切なんですね。SDGsの4つ目は、そうした学ぶ場をみんなに用意しようという目標です。
教育の問題に対して私たちができること
4つ目の目標に対して私たちができることは、学校に通えることをあたりまえだと思わず、しっかりと学ぶこと。そして“知りたい”という探究心をもって、いくつになっても学び続けていくことが大切です。そうして知識が増えた分だけ世界は広がっていきます。そこで得た知識を持って、次は他の子どもたち、学校に通いたくても通えない子どもたちに何ができるのかを考えていきましょう。
出典 : ※1 unicef(国際連合児童基金)
目標5 ジェンダー平等を実現しよう
「ジェンダー」とは、生まれた時の性別とは別に、男の子と女の子にもたれるイメージや役割から社会によっていつのまにかつくられた性別のこと。男の子と女の子はカラダだけでなく、考え方や生活も違います。大きくなると家や社会での役割も変わってきますが、その違いの中で生まれた不公平や差別をなくそうというのが5つ目の目標です。
「男の子なら強くないと」「女の子だから可愛く」などと言われた事はありませんか。多くの人はそれが当たり前だと思って生活していますが、中にはそう思えない、心とカラダの性別が異なる人もいます。そういう考え方を「普通ではないから」と差別するのではなく、個性として考えることが大切だと言えるでしょう。
もう一つ、世界では女性というだけで教育を受けられなかったり自由がなかったり、さまざまな差別をされている国があります。目標4の中にあった学校に通えない子どもたちの中には、こうした差別を受けている女性や女の子も含まれています。また、日本でも政治や経済の活動や意思決定に参加する男女の格差は、他の国と比べて非常に大きく、日本の社会が解決しなければならない問題がたくさんあります。
目標5で私たちができること、それはまず考え方を変えることです。例えば、みなさんの家では、家事をどのくらい家族で分担していますか。家事は女性だけの仕事ではなく、男性、女性に関係なく“一緒にやる”ものです。まずは分担して協力することからはじめましょう。お互いに思いやる気持ちを持つことが大切です。
目標6 安全な水とトイレを世界中に
皆さんは普段どのように水を使っていますか?洗面所の水で手を洗い、トイレで水を流し、キッチンには浄水器が備えられている家庭もあります。しかし水は蛇口から魔法のように湧き出ているわけではありません。川や湖、池などの水源が豊富にあり、そこにつながる水道がしっかりと整備されている日本だからこそ、毎日きれいな水を飲んだりお風呂に入ったりできるのです。
しかし日本でも暑い日が続いて水がなくなったり、台風などの災害で水道が壊れると、水が出ない「断水」が起こることがあります。実際に経験したことがある人はその時の大変さを思い出してください。世界には水道が整備されておらず、毎日の飲水さえ手に入らない人々が約22億人(※1)いると言われています。
水は飲み水以外にも、手を洗ったり、うがいをすることで、衛生的な環境を保ったり、病気を予防することにも使われています。例えば汚いトイレには入りたくないですよね。世界では約42億人(※2)が安全に管理されたトイレを使うことができません。そうした場所は、不衛生で病気になりやすいだけでなく、学校にトイレがないことで女の子が学校を休んだり、野外で用を足すことで女性のプライバシーが守られず犯罪に巻き込まれたりするなど、別の問題が発生してしまうこともあります。そこで目標6では誰もが必要とするきれいな水を、みんなが当たり前のように使えるようにし、トイレを安全で衛生的な場所にする取り組みが進められています。
安全な水とトイレの問題に対して私たちができること
実は水不足の問題は深刻で、地球温暖化や人口の増加が進む中、2050年には深刻な水不足に見舞われる人口は、39億人(世界人口の40%以上)に達すると予想されています。(※3)
そんな中で私たちができることは、やはり水を使えることを当たり前と思わず大切に使い、そして毎日の生活の中で節水を心がけることが大切です。
出典 : ※1、※2 2019年ユニセフ・WHO共同監査報告書 ※3 2012年経済協力開発機構(OECD)「環境アウトルック 2050」(英語版)
目標7 エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
夜の闇を明るく照らしてくれる電気は、料理、洗濯、冷房や暖房などさまざまな家電を動かす力となり、今や私たちの生活に欠かすことができません。しかし電気も水と同じように限りある資源。当たり前のように使って生活していませんか。現在、世界では10人に1人(※1)が電気を利用できない環境で暮らしており、薪や炭などを使った生活を続けています。
では、多くの人が使えるように電気をたくさん作ればと思いますが、そうもいきません。電気は発電所と呼ばれる場所で、石油や石炭、天燃ガスなど化石燃料を燃やすことで作られています。ここで発生する二酸化炭素が地球温暖化の原因の一つと言われています。燃料となる資源に限りがあるだけでなく、二酸化炭素の排出を抑えるためにも、化石燃料を利用して作る電気を少なくしなければならないという問題も抱えているのです。
そこで化石燃料ではなく、太陽光や風力など自然のチカラで作った「再生可能エネルギー」を積極的に利用して、私たちの暮らしだけでなく、地球環境にも優しい生活をしようというのが7つ目の目標です。
地球にやさしいエネルギー利用は、再生可能エネルギーを使っていこうということだけではありません。電気を無駄に使わないことも大切です。一人ひとりの小さな積み重ねが世界で集まれば大きな節約になります。まずは日ごろから節電や省エネを心がけるところから始めてみましょう。
出典 : ※1 経済産業省・資源エネルギー庁 政府の節電ポータルサイト「節電。go.jp」2015 Archive
目標8 働きがいも経済成長も
毎朝食卓に並ぶご飯はどこからやってくるのでしょう。野菜を育てる仕事、それを運ぶ仕事、美味しく料理する仕事など、いろんな所でいろんな人が働いているおかげで私たちの生活は豊かになり、毎日お腹いっぱい、美味しいものを食べることができるんですね。
世界にはたくさんの仕事があります。決まった時間働いたり、少しの時間アルバイトしたりと、仕事の仕方もさまざまですが、多くの人は生活するのに必要なお金を手に入れるために働いています。しかし、仕事がなかったり、手に入れられるお金が少ないために、子どもたちまで働いている国や地域もあり、学校に行けず働く子どもの数は世界で約1億5200万人、10人に一人が働いていることになります。(※1)
こうした背景には、SDGsの目標1の貧困や目標2の飢餓などの問題があります。また、危険な労働環境で働くことで、健康を損なったり、犯罪にもつながりかねないのです。
働き方の問題に対して私たちができること
日本でも働く時間が長すぎたり、働いた分のお金がしっかりともらえていなかったりと、“働く”ことにさまざまな問題を抱えています。そこで目標8では、“何のために働くのか”、“どうすればみんながやりがいをもって仕事ができるのか”を考えています。
まだ働いていない子どもたちにはピンと来ないかもしれません。例えば、夏休みにみなさんはお手伝いをして家族に感謝されたり、おこづかいをもらったりしてうれしかった経験はありませんか。みんなが満足のいく働き方をすることは、これからの社会をつくっていく上でも大事なことです。どんな働き方がいいのか、働きやすい環境はどういう場所なのか、一度考えてみましょう。目標8の問題解決のヒントが見つかるかもしれません
出典 : ※1 2017年 国際労働機関(ILO)「児童労働の世界推計:推計結果と趨勢、2012〜2016年」
目標9 産業と技術革新の基盤を作ろう
「インフラ」という言葉を知っていますか。インフラには、電気やガス、水道などの生活を支えるインフラ、道路や鉄道などの交通インフラ、電話やンターネットなどの通信インフラなどがあり、私たちの生活を支えるだけでなく、産業の発展になくてはならない施設やサービスがこう呼ばれています。目標9は、こうしたインフラを整えて、新しい技術(イノベーション)を開発し、産業を発展させて、人々の生活をより安定した豊かなものにしようというものです。
インフラ、新しい技術、そして産業の発展を考える目標9は、目標8ととても深いかかわりがあります。人々が豊かになるためには、仕事が必要であり、働く場所として産業の発展が重要となってきます。さまざまな産業で多くの人が働いていて、毎日良いものをつくろうと、便利なサービスを提供しようとがんばっているのです。
日本は生活や産業を支えるインフラが整った国だと考えられがちですが、台風などで電柱がたおれ停電してしまうこともありますよね。8月は台風のシーズンですが、インフラを災害に強くするためにどのような新しい技術が使われているのか、さらには貧しい国や地域でも使うことができる技術はあるのかを考えてみるとよいでしょう。
より良いものやより便利なサービスを生み出す新しい技術やインフラは、この目標だけでなく他のSDGsの目標を達成するための土台にもなります。新しい技術や産業の発展によってマンガやテレビでみた夢のような世界が現実のものとなる日はそう遠くないかもしれません。
目標10 人や国の不平等をなくそう
皆さんはこれまでに自分が差別されたり、不公平だと感じたことはありますか。もしあったとしたら、その気持ちを抱いた瞬間は、とても悲しく感じたり、憤りを感じたはずです。
今、世界にはいろいろな不平等が広がっています。人種や民族、宗教、性別、先進国と途上国、健常者と障がいがある人など、違いがもたらす不平等です。
例えば貧富の格差。世界の人口は約77億人。そのうち最も豊かな8人が世界の貧しい人たち36億人分と同じ資産を持っています(※1)。世界の富が一握りのお金持ちに集中しているのです。
今までみた目標にもあったように、国や地域によって、貧しい人たちは食事や水が充分とれなかったり、学校に通えなかったりして、いつまでも貧しい生活から抜け出すことができない状態にあります。それが次の世代にも受け継がれ、負の連鎖が続く格差が広がっているのです。また、最近では、新型コロナウイルス感染症の爆発的な流行によって、より不平等を深化させています。世界的な流行によって、仕事を失ったり、収入が減ったりといった経済的な面だけでなく、保険制度や医療が整っていない国や地域では弱い立場にいる人たちが取り残されがちになっているといった影響がでています。(※2)
目標10「人や国の不平等をなくそう」では、2030年までに不平等や差別をなくし、誰も取り残されない、社会、経済、政治的な側面からも平等な環境を実現することを目指します。
不平等や差別の問題に対して私たちができること
みんな一人ひとり顔や体つきがちがうように、みんなが違っていて当たり前だということを知り、お互いを理解し合うことを大切にしましょう。世界にはさまざまな人たちが暮らしています。思いやりを持って、互いに大事にし合うことが不平等や格差をなくし、貧困や紛争をなくすことにつながります。
国と国の関係においても、各国政府が対話を図り、資金を必要とする国々に対し政府開発援助や直接投資などの資金が流れるようにしたり、貿易において特別な扱いをすることなどを通じ、目標達成への努力をする必要があります。
出典 : ※1 「99%のための経済」オックスファム2017報告書 ※2 https://www.un.org/sustainabledevelopment/inequality/(2020年9月アクセス)
目標11 住み続けられるまちづくりを
安心して生活できる住まいは暮らしの基礎となります。そして町全体が平和で安全であるからこそ、危険にさらされることなく、家族とくつろいだり学校へ通ったり会社で働いたりすることができます。
現在、世界人口の半数以上は都市部で生活しています。これが2050年には68%(※1)にもなると推定されています。人口が集中すると、都市部では大気汚染や環境汚染などが深刻化します。また、住む場所が整わないまま仕事を求める人たちが都市部に集まると、貧しい人たちが住むスラムが発生します。世界では、実に都市住民の4人に1人がスラムに類似した環境で暮らしています(※2)。不平等や格差といった側面からも、誰にとっても安全で、安心して住み続けられるまちづくりは不可欠なのです。
住みやすいまちづくりには、誰もが使いやすくてアクセスしやすいことも重要です。例えば、駅の階段の横にエレベーターやスロープがあるのをみかけませんか。エレベーターやスロープがあれば、階段を使いづらい高齢者や子ども連れの人にも使いやすくなります。町の看板や案内に、日本語だけでなく、外国語や点字、わかりやすいイラストや音声が使われたりすると、誰にでも情報が平等に伝わり、目的にたどりつきやすくなります。
さらに、自然災害の多い都市では、強いまちづくりも必要です。世界では、地球温暖化の影響もあり、近年自然災害の数が増加。干ばつ、大きな台風、豪雨、山火事など人々が避難や移住をせざるを得ない状況が発生しています。これからの都市に必要なことは便利で快適なだけでなく、災害があっても早く復旧できる自然災害に強いまちづくりです。また、普段から地域の人と交流し、いざというときに助けあえるような関係を築いておくことも大切です。住居の強化とともに、ハザードマップを家族で確認したり、地域の防災訓練に参加するなどして周りと協力して生活し、災害に備えましょう。
出典 : ※1 世界都市化展望2018 (国連経済社会局) ※2 2019年国連「持続可能な開発目標(SDGs)2019報告」
目標12 つくる責任 つかう責任
車や携帯電話などの便利な道具、美味しい食べ物、素敵な洋服など、私たちの身の回りには生活を豊かにしてくれるモノが沢山あります。それらは何からつくられているか考えたことはありますか。答えは地球にある“資源”から。世界では毎日たくさんの資源を使って多くのモノをつくり、私たちはそれを消費して暮らしているのです。
では、今何が問題になっているのでしょうか。それは「限りある資源が少なくなってきている」こと、それに対して「つくられるモノが増えている」ことです。例えば「食品ロス」の問題を聞いたことはありませんか。せっかく作ったものを食べられないから捨てる、賞味期限が過ぎてしまったから捨てる、食べられる部分なのに調理の段階で捨ててしまうなどの原因により、日本で捨てられる食べ物の量は年間600万トン以上(※1)になると言われています。必要以上につくる側にも責任がありますが、食べられるものを残して捨ててしまう私たちにも責任があります。
そこで目標12では、つくる側もつかう側も、それが必要なものなのかどうか、しっかりと考えて、最後まで責任を持ってしっかりとつかう。それをみんなで心がけるための目標です。
持続可能な生産の問題に対して私たちができること
私たちができることは無駄遣いをなくし、省エネを心がけ、そしてご飯を残さず美味しく食べることです。それに加えて、限りある資源を有効に使うための方法にも目を向けてみましょう。このあとの目標にも繋がることですが、食べものを入れるプラスチック容器やペットボトルなどのゴミをしっかりと分別・リサイクルすることで、資源の無駄遣いを防ぐだけでなく、海を汚すプラスチックの問題にも取り組むことができます。
今、世界中の人が日本人と同じ生活をした場合、1年間に地球2.8個分の自然資源が必要になる(※2)と言われています。こうした消費を少しでも減らし、未来の子どもたちが豊かな暮らしをおくれるようにするためにも、今の私たちが“つくる責任 つかう責任”をしっかりと考えていきましょう。
出典 : ※1 政府広報オンライン もったいない!食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らそう ※2 世界自然保護基金(WWF) 日本のエコロジカル・フットプリント
目標13 気候変動に具体的な対策を
皆さんは近年、ゲリラ豪雨や大型の台風、洪水、猛暑の日が増えてきたように感じていませんか。“地球温暖化”という言葉を聞いたことがあるかもしれません。私たちが豊かに生活するために作ったモノや、使っている道具によって、地球温暖化が進んでおり、異常気象や海面上昇などの問題が世界中で引き起こされています。
世界の平均気温はおよそ100年前と比べて0.85℃上昇しました(※1)。大きな原因は石油や石炭、天然ガスを燃やして電気を作っていることだと考えられています。石油や石炭、天然ガスをたくさん燃やすと二酸化炭素が発生し、地球が温かくなる問題を起こします。これが「地球温暖化」です。
このままのペースでいくと更に地球の温暖化は進むことが予想されています。地球が温かくなると南極や北極にある氷が溶け、海の水位が上がります。ホッキョクグマは暮らす場所をなくし、ツバルやキリバスなど海抜が低い島は国土の大部分が水没すると心配されています。日本でも巨大台風や豪雨などによる洪水や土砂崩れなどの災害が増加し、毎年多くの被害が出ています。私たちは地球の環境を守り、未来に生きる子どもたちに今の地球を引き継ぐためにも、力を結集してすぐに対策を取らなくてはなりません。
誰でもできる地球温暖化対策
では、具体的にできることは何でしょう?それは、何度も利用できるエネルギーの活用を進める仕組みを作り広めるとともに、皆が意識を高めて暮らしの中で省エネを心がけることです。
二酸化炭素をできるだけ出さないように工夫すること、例えばリサイクルに積極的に取り組み、環境に負荷をかけない商品を選ぶことも二酸化炭素を減らすことにつながります。少しの距離なら自動車に乗るのではなく、自転車に乗ったり公共交通機関を利用する。古い車や家電等を買い替える時はエコなものにする。エアコンの温度を控え目に設定する。身近で簡単にできることを皆が少しずつ実践すれば大きな力になるのです。その一方で、地球温暖化による災害の被害を軽減するためには、ハザードマップで避難経路や避難場所を確認するなど災害が発生した時の対応を家族で相談し備えることが大切です。
出典 : ※1 IPCC第5次報告書(2014年)
目標14 海の豊かさを守ろう
地球の表面積の7割を占める海は、多くの種類の生きものが生息する豊かな生態系の源です。私たちは海から食べ物を得る以外にも、多くの恵みを受けています。しかし、昨今では街から出た大量のごみや汚染物質が海に流出することにより海の生きものは危機的な状況になっています。2016年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、今のままの状態が続けば海のプラスチックごみの量は2050年までに魚の量を超えるとの試算が示されました。
プラスチックは自然分解されずに半永久的に海を漂います。中でも5㎜以下の小さなプラスチック片であるマイクロプラスチックは、魚がエサと間違って食べてしまうことにより、人間を含めた生態系全体への悪影響が問題視されています。さらに最近では、新型コロナウィルス感染症対策により使い捨てマスクのごみが急激に増加。特に不織布マスクは紙のように見えますが実はプラスチック製で、新たな海のプラスチックごみのひとつとなっています。
もう一つの問題は魚の獲りすぎによる水産資源の減少です。漁獲量が増加しているとともに違法な漁法も増え、多くの海の生きものが数を減らしています。このままでは近い将来、マグロやウナギが食べられなくなる日が来るかもしれません。私たちは海と海洋資源を守るため、たくさん魚を獲りすぎないよう管理したり、資源の回復や維持を図ることが必要です。
日本の1人当たりの使い捨てプラスチックの廃棄量はアメリカに次いで世界で2番目の多さです(※2)。海の命と環境を守るために、普段からプラスチックごみを出さないように心掛けなければなりません。海の資源である魚を食べ残さないようにするだけでなく、マイバッグやマイボトルを持ち歩いてプラスチックの利用を最低限に抑え、プラスチックごみを正しい方法で分別し再利用するなど、一人ひとりが前向きに取り組むことが海と海の資源を守ることにつながります。
出典 : ※1 2018年、国連環境計画(UNEP)報告書「シングルユースプラスチック」
目標15 陸の豊かさも守ろう
2010年に名古屋市でCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)と呼ばれる世界会議が開かれたことを知っていますか。 私たちの暮らす地球には森や川、草原や砂漠など様々な場所があり、そこに暮らす多くの生き物はお互いにつながりあい、自然の環境とバランスを取りながら暮らしています。それらはあわせて生態系、そして生き物のつながりの豊かさは生物多様性と呼ばれています。その生物多様性が私たち人間が行う開発や出すゴミによって失われているため、COP10をきっかけに今一度身近な環境問題について、「一緒に知って、理解して、行動しましょう」ということになったわけです。
COP10から10年が経ちましたが、世界ではいまだ環境破壊が進み、1年間に約1,000万ヘクタールの森林が失われ(※1)、約3万1,000種類の野生生物が絶滅の危機(※1)に瀕しています。しかし、愛知県では市民団体・NPO、企業、教育機関などに関わる様々な人たちが生物多様性の保全活動に取り組み、少しでも環境を良くしようと今も努力を続けています。
絶滅危惧種の保護活動、地域の子どもたちが聞き取り調査をして作るMAPの作成、森と水辺の生態系保全に取り組む企業や、養蜂を生物多様性に結びつけて考える教育機関の活動など、多岐にわたる活動事例は「あいち・なごや生物多様性ベストプラクティス」としてまとめられていますので、覗いてみると自分に何ができるのかのヒントになるかもしれません。
生物多様性を守るためにできること
近年、名古屋港でもヒアリが発見されたというニュースがありました。ヒアリは日本の在来アリを駆逐したり、小動物を捕食して減少させ、生態系のバランスを壊してしまう恐れがあります(※2)。生物多様性を守るためにはそこに住む生き物の生活を詳しく知る必要がありますので、「生き物に興味を持ち調べる」というのも、重要な取り組みになります。身の回りにはどのような生き物が暮らしているのかを調べてみても良いでしょう。こうしたことをきっかけにすると、どのように生態系が破壊されているのか、どういうことが生き物にとって問題か、そしてどうすれば再び生き物が暮らせる環境を作れるのかが分かりやすくなるでしょう。
出典 : ※1 2020年国連「持続可能な開発目標(SDGs)2020報告」 ※2 環境省「特定外来生物ヒアリに関する情報」(http://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/attention/02_general/index.html)
目標16 平和と公正をすべての人に
世界中では様々な争いが起きており、争いを原因とした貧困や飢餓、暴力で犠牲になるのはいつも女性や子どもたちです。世界では、4人に1人の子どもが災害や紛争といった緊急事態下の国や地域で暮らしています。例えば、紛争で難民として非難してきた子どもたちは、多くの場合、避難してきた国に正式に留まる資格がないため、教育を受けることができないことがあります。また、ケガや病気になっても治療を受けられないなどの問題もあります(※3)。目標16は、国や人種を問わず、誰もが平等になる法律を整え、平和な社会を作ることに取り組んでいます。
具体的に取り組むことが難しいように感じるかもしれませんが、地球上で起こっている問題に興味を持ち、どれだけの人が困っているか、そしてこうしたことが続いていくと世界はどうなってしまうのかを知り、それを多くの人と一緒に考えることが「平和と公平をすべての人に」届けることに繋がるのです。
では改めて、目標16が問題としている事柄について見ていきましょう。国際連合広報センターによると、1946年以降、世界的にみて戦争や紛争による戦死者は減少を続けているといいます。しかし、紛争の数や暴力の問題は増加傾向にあります。そして現在では、武力紛争よりもむしろ犯罪が多くの人の命を奪っており、特に組織的犯罪や都市・家庭内暴力が目立って多く、2017年に発生した女性の殺人事件のうち、約58%は親密なパートナーか家族の手によるものであるという結果も出ています。
これらはすべて、映画やドラマではなく今地球上のどこかで行われていることです。公正な社会を実現させるためには政治に興味を持ち、関わっていくことも大切です。日本では18歳から選挙に参加できますので、ぜひ参加するようにしましょう。
出典 : ※1 UNICEF “UNICEF Humanitarian Action for Children 2020 Overview” ※2 総務省 国政選挙における年代別投票率(平成29年10月に行われた第48回衆議院議員総選挙)
目標17 パートナーシップで目標を達成しよう
これまで「みんなではじめるSDGs」ではそれぞれの目標を確認しながら、今自分に何ができるのかを考えてきましたが、目標17は一人や一つの国では解決することの難しいさまざまな問題をパートナーシップで解決を目指していきましょう、という目標です。SDGsは、今ある世界のさまざまな問題を解決し、みんなが地球に住み続けられるよう経済、社会、環境のバランスがとれた社会を目指し、すべての国、すべての人が協力しあっていかなければならない世界共通の目標で、その目標は17の幅広い分野にわたっています。それぞれの国での取り組みも必要ですが、気候変動や海洋プラスチック問題など、地球に関わる問題などは国同士が協力し世界で取り組むことが不可欠です。
例えば、目標9「インフラ・産業・新しい技術」のところでみたように、インフラには電気やガス、水道などの生活を支えるインフラ、道路や鉄道などの交通インフラ、電話やインターネットなどの通信インフラなどがあり、私たちの生活だけでなく、産業の発展になくてはならない施設やサービスです。
先進国ではこうしたインフラが整えられ、さらなる発展が進められる一方、途上国ではインフラが整っていない分野もあり、支援や協力を必要としている場合があります。しかし、今先進国で使われている技術をそのまま当てはめればいいというわけにはいきません。国が違えば考え方も違うため、お互いを尊重し、その国や地域にあった方法について知恵を出し合い、関係するさまざまな組織や人々と協力しあって解決していくことが必要です。そしてパートナーシップは先進国と途上国の間だけとは限りません。途上国同士がお互いの開発の手法などを学びあい、協力しあうことも大事なパートナーシップです。
地球環境をより良くすることができるなど世界全体に影響があるこういった協力は、どの国も対等な立場で発展していくために大切なことです。そうすることでさらなる問題の解決や他の目標の達成につながることもあるでしょう。
人と人とが協力し合う関係もパートナーシップです。会社で働く人や学校の先生、近所のおじさんおばさんなど、周りを見回してみるといろんな人が暮らしていますが、みんな違う生活をしてみんな考え方も異なります。これまで見てきたような問題を解決するためには、地域や家庭においてもパートナーシップを持って協力し合うことが大切です。
SDGsは2030年の達成を目指しています。みなさんは2030年にはどのような世界、どのような社会であってほしいですか。人類にも地球にも良い未来となっているといいですね。そのために世界や地域の問題が私たちの生活にどう関わっているかを調べて、自分はどう協力できるかを考えてみることもいいでしょう。今は、SNSなどで世界中の人々と簡単につながり発言することのできる時代です。その中でも声を上げることは決して簡単なことではありませんが、こうしたツールを使い世界中の人たちがどのような考えを持っているのかを知っておくだけでもよいでしょう。SDGsの達成に向けて、少しずつでも協力の輪を広げていきましょう。