Vol.03 公害からの都市の再生、持続可能なまちづくりについて考える
住み続けられる“まち”のカタチ
今回は服部愛子さんが四日市公害と環境未来館を訪れ、
同館の森田将司さんの案内のもと、公害からの都市の再生、
持続可能なまちづくりについて考えます。
発展と住みやすさの両立 四日市で学ぶまちづくり
服部 四日市はコンビナートが有名で、最近は工場夜景でも話題になりましたが、どのように街がつくられていったのでしょうか。
森田 毎月四のつく日に開かれた定期市が由来とされ、江戸時代には東海道の宿場町として栄えました。戦後復興の中で、沿岸部に石油化学コンビナートが建設されると、大気汚染などの公害が発生しました。四日市ぜんそくは四大公害として知られていますが、当時は日本全国で大気汚染が問題となっていて、東京の空も濃いスモッグに覆われていました。
服部 そうなんですね。私も数年間インドネシアのジャカルタで暮らしていましたが、息苦しいほど大気の状態が悪かったんです。四日市で残された記録は世界中の発展途上にある国々にも役立ちそうですね。記録を残し、伝えることの大切さを改めて考えさせられます。
森田 そうですね。当時を知る方の貴重な声や映像も当館には保存され視聴できますので、ぜひご覧ください。
持続可能な発展のために技術・知識を集結させる
服部 記録では1959年から公害が深刻化し、1965年には市が全国に先駆けて公害患者の医療費(自己負担分)の全額負担を行ったとありました。
森田 この時点では根本的な解決にはなりませんでしたが、大きな転換となったのが67年から始まった四日市公害裁判です。公害認定患者9人が声を上げ、72年に原告勝訴の判決が下されました。「企業は経済性を度外視して、世界最高の技術・知識を動員して防止措置を講ずべき」と述べた判決は産業界に大きな投げかけとなりました。まさにSDGsの理念の先取りと言えるのではないでしょうか。また、国や自治体に対しても、事前の調査検討を経ず企業誘致を進めたことに対して指摘されたことは、今のまちづくりに大きく影響しています。
服部 何よりも声を上げられたた方そして、裁判に携わった方の尽力や苦労に言葉もありません。公害から目をそらすのではなく市民、企業、行政の努力によって一段と発展を遂げた四日市のまちづくりは素晴らしく、これからの持続可能な発展に欠かせないキーワードだと感じました。
Navigator’s eye
目標11「住み続けられるまちづくり」は目標13「気候変動に具体的な対策を」目標14「海の豊かさを守ろう」にも密接に関わっており、何よりも目標16「平和と公正をすべての人に」に関わる法律の整備や、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」といった目標がこれからのまちづくりには大切になるということを学ばせていただきました。
四日市の名産品・萬古焼の歴史も紹介
説明を受ける服部さん
天井の青空はコンビナートの煙突と同じ大きさ
子どもたちにもわかりやすい内容で伝える環境の今
四日市公害と環境未来館(そらんぽ四日市内)
ラジオパーソナリティ・ナレーター 服部愛子さん
四日市公害と環境未来館(そらんぽ四日市内)
そらんぽ四日市は四日市市立博物館、プラネタリウム、四日市公害と環境未来館の総称です。四日市のあゆみを原寸大再現で展示する3階常設展のほか、2階「四日市公害と環境未来館」では四日市公害の歴史や資料、公害に対する取り組みなどを学ぶことができます。4階にはさまざまな特別展・企画展、5階にはプラネタリウムが併設されています。
・住 所 三重県四日市市安島1-3-16
・T E L 059-354-8065
・営業時間 9時30分~17時(展覧会への入場は~16時30分)
・定 休 月曜(祝日の場合は翌平日)、館内整備休館あり
・料 金 入館無料、プラネタリウムは大人550円、高・大学生390円、小・中学生210円。有料の企画展・特別展も開催
・アクセス 公共交通:近鉄四日市駅→徒歩3分
・駐 車 場 なし
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