Vol.03 未来を創るイノベーションの可能性
今回は辻本達規さんがトヨタ産業技術記念館を訪れ、
副館長の牧野功さんの案内で、
近代日本の発展を支えた繊維機械や基幹産業である
自動車の歴史からイノベーションの可能性を学びました。
機械化された糸紡ぎを体験
技術革新により新しい産業基盤を確立
牧野 トヨタ産業技術記念館では、大正時代の工場を産業遺産として保存しながら、繊維産業と自動車産業における技術の変遷を展示物により紹介しています。
辻本 紡織工場のノコギリ屋根や赤煉瓦の壁が象徴的ですね。
牧野 愛知県をはじめとする当エリアは、ものづくり産業の集積地として日本経済をリードしてきました。その代表的な製品のひとつがトヨタのものづくりの原点ともいえる無停止杼換式豊田自動織機(G型)です。
辻本 自動化が大きな転換だったのでしょうか。
牧野 そうですね。技術革新により自動織機という新しい基盤を確立させたことで、繊維産業が飛躍的に発展していきました。電子技術の無い時代に、素材のたて糸が切れると自動で止まるなど、数多くの自働化技術が用いられました。50以上の特許を取得し、世界から技術力の高さを認められたことが、後の自動車産業進出のきっかけとなりました。
辻本 SDGsでも必要とされるイノベーションの歴史を垣間見ることができてとても興味深いです。
シリンダブロック試作では数百回に及ぶ失敗も
求められる課題を捉えそれを超える品質を提供
牧野 トヨタが自動車づくりを始めたのが1930年代。当時日本には自動車を作る技術がなく、街を走るほとんどが輸入車でした。「国内の地形や需要に合った自動車を作りたい」という思いのもと、国産車の開発が始まったのです。
辻本 技術によって問題を解決し、誰もが利用できるものを作るというのはSDGsの考え方と共通していますね。
牧野 専門の学校や技術を教えてくれる場所がない時代ですから、見よう見まね、試行錯誤の繰り返しでした。次に作るものは今より少しでも良いものにしようという積み重ねや思いがあったからこそ、国産自動車を完成できたのだと思います。実はトヨタが初めて量産したのは「トヨダG1型トラック」で、乗用車ではありませんでした。これは世相を大きく反映したもので、ものづくりの歴史からは時代も窺い知ることができます。
辻本 技術力はもちろんですが、何が求められていてどのように提供し、利用してもらうかまで考えていくことが大切で、SDGsにもこうした視点が必要だということを学びました。
Navigator’s eye
紡織機で世界に技術力の高さを示すことができたおかげで、自動車づくりにつなげることができたという話にとても感銘を受けました。先人が切り開いてくれた道があったからこそ、後から続く人たちがそれを超えるイノベーションを起こせるのだと思います。答えは一つでは無いという考え方も今回学んだことに通じるものがあり、SDGsがつくる未来のあり方のヒントになりました。
トヨタ産業技術記念館
BOYS AND MEN
辻本達規さん
トヨタ産業技術記念館
トヨタ産業技術記念館は、トヨタグループ発祥の地で、大正時代の工場や繊維機械、自動車技術の展示や実演を楽しめる博物館です。
・住 所 名古屋市西区則武新町4丁目1-35
・T E L 052-551-6115
▶︎公式ホームページ