Vol.09 未来を育む科学と学びのチカラ
今回はクリス・グレンさんが名古屋市科学館を訪れ、
学芸員の小林修二さんの案内のもと、暮らしに欠かすことのできない科学と、
それをSDGsに結びつける学びについてお話を伺いました。

学べる教材が理工館3階に準備されている
子どもの可能性を広げる体験と気付き
クリス SDGsの目標を達成するには、教育がとても大切になると考えています。ただ、子どもたちにSDGsを教え、理解してもらうことは難しそうですね。
小林 そうなんです。ポイントは、答えを押し付けるのではなく、子どもたち自身が考えるきっかけを作ること。例えば、名古屋市科学館の「エネルギー」の展示では、リチウムイオン電池や太陽光パネルを見学した後に「クリーンエネルギーについて、あなたならどう考える?」と問いかけるようにしています。
クリス 名古屋市科学館では展示を通してSDGsを学べる仕組み作りを行っていると聞きました。どのような取り組みでしょうか。
小林 目標達成に必要なステップや要素を整理できる「マンダラシート」や、考えるきっかけを作る「SDGsカード」を、科学館の見学者の意見をもとに作成しました。来場した子どもたちが展示をみながら、自主的に取り組めるような仕組みにしています。
クリス それらを使った子どもたちの反応はどうでしたか。
小林 例えば「電気エネルギーのこれから」という問いに対しては、「発電方法のバランスを考える」「燃料電池で蓄える」といった、大人顔負けの回答も出てきています。
クリス それは素晴らしいですね。子どもの可能性を感じます。

社会見学に来ていた子どもたちもクリスさんのコンポストの説明に興味津々
生態系の循環を体験 好奇心を大切に
小林 100人の来場者のうち10人でもいいので手に取ってもらい、興味を持つ子どもたちの芽を、体験を通して育んでいきたいと考えています。
クリス 体験できる展示にはどのようなものがあるのでしょうか。
小林 生命館3階にあるリサイクルガーデンなどは人気ですね。ミミズトンネルという展示があって、子どもたちはミミズの視点で生態系の循環を体験します。SDGsの目標15「陸の豊かさを守ろう」につながる展示で、リサイクルや生態系の仕組みを遊びながら学ぶことができます。
クリス 面白い発想ですね。子どもの好奇心を引き出すアプローチは大切だと思います。
小林 答えを教え込むのではなく、自分で考える力を育むことが重要だと考え、明確な答えは用意せず、こちらから無理に紐づけることもしていません。
クリス 将来的にはどんな展開を考えていますか。
小林 科学館にはありとあらゆる学びが詰まっていますので、様々な目標をテーマにした教材も作っていければと思います。
Navigator’s eye
SDGsは難しい概念ではなく、私たちの日常と深くつながっていることを、遊びと学びを通じて伝えている、素晴らしい取り組みだと感じます。来場していた子どもたちの理解度の高さにも驚きました。より多くの人がSDGsについて関心を持ち、行動に移すきっかけになってほしいと思います。この先の未来のために子どもたちの好奇心と探究心を育てることは僕ら大人の大切な役目ですね。

名古屋市科学館

ラジオDJ / タレント
クリス・グレンさん
名古屋市科学館
「みて、ふれて、たしかめて」だれもが楽しみながら科学に親しめる国内屈指の総合科学館
(名古屋市中区栄二丁目17番1号)
休館日/月曜日・第3金曜日・12月29日から1月3日
入館料/一般400円、高大生200円、中学生以下無料※特別展とプラネタリウムは除く