＜藤田医科大学＞
医療連携の円滑化で災害対応も
未来を先取る医療AI、技術革新の最前線
高度な臨床研究や大規模災害への対応において、医療機関同士や地域とのより緊密な連携が求められる中、
藤田医科大学病院は課題解決の鍵としてＤＸによる医療ネットワークの構築を推進しています。
電子カルテ情報共有サービスのモデル事業への参画や、データ標準化による研究基盤の整備など、
地域を越えた医療連携の実現を見据えた取り組みについて、病院長の今泉和良氏にお話を伺いました。
藤田医科大学病院 病院長
今泉和良氏
今後の医療で必須となるＤＸ
革新技術を最前線で検証
ーー藤田医科大学病院における医療ＤＸの位置づけをお聞かせください。
臨床研究や災害対策において、医療機関同士の連携は不可欠です。しかし、従来のやり方では情報共有に限界がありました。そこで当院は、医療、研究、災害対策に並ぶ大きな柱として医療ＤＸを位置づけ、データ標準化や電子カルテ情報共有サービスへの参画など、医療ネットワークの構築を全国に先駆けて推進しています。医療ＤＸは、これからの医療連携を実現するための本質的な取り組みだと考えています。
ーー診療プロセスにどのような変化が現れていますか。
本格的に実装したばかりですが、最も早く着手した診療サマリー（診療記録の要約）の自動生成では、ＡＩを活用することで、ほぼ自動的に作成できるようになりました。医師や看護師は確認するだけで済むため大きな時間短縮となり、「働き方改革」としても良い影響が現れています。現在特に力を入れているのは音声入力システムです。医師と患者さんの会話を音声で記録し、ＡＩが内容を解析してカルテの適切な項目に自動で分類します。手入力よりも重要な情報を漏らさず記録でき、開発当初に比べ精度も飛躍的に向上しました。まだ完璧ではありませんが、実用には十分な精度を実現しています。
ーーデータの標準化にも注力されていると伺いました。
簡単に言えば、分類の仕方が異なっていると、同じ内容のデータでもまとめられないという問題がありました。分類が標準化・統一されれば、様々な外部ソフトウェアとの連携が可能になり、臨床研究のための大規模データベースを構築できるようになります。異なる病院間でもデータを比較・活用できるようになるため、臨床研究の飛躍的な加速が期待されます。
本格的に進む地域医療連携
災害時の対応にも注力
ーー地域医療連携への展開はいかがでしょうか。
外来予約のデジタル化といった基本的な部分は進んでいますが、ＡＩ活用による本格的な地域連携はこれからが本番です。しかし、当院は国が推進する電子カルテ情報共有サービスのモデル事業に参画しており、来年度以降は一般の医療機関も参加する見込みです。これにより、紹介状などのやり取りが完全デジタル化され、地域医療連携のＤＸが加速すると期待しています。国は２０３０年までに全医療機関の情報網を接続する方針を掲げており、当院はその実現に向けて率先して取り組んでいます。
ーー医療ＤＸによって、医療の未来はどう変わっていくとお考えですか。
現在は便利なツールとしての側面が強いですが、今後は「考えるツール」へと進化していきます。電子カルテを作成するツール自体が思考し、診断や治療計画を提案するようになるでしょう。医師と同じくらいの豊富な知識と判断力を持つＡＩが、家庭でも利用できるようになれば、医療の民主化が実現します。手術などの技術的な領域も、やがてはロボットが担うようになると考えています。すでにロボット手術の動画をＡＩで解析し、自動化する研究も進んでいます。
ーー最後に、藤田医科大学病院の医療ＤＸへの展望をお聞かせください。
まずは現在のシステムをより使いやすく改善していくことです。音声入力の更なる簡便化や、看護師の日常記録への展開など、活用範囲を段階的に拡大していきます。また、災害時の情報共有においても、電子カルテによる記録の共有は、中部地区の大きな課題解決につながると考えています。国が２０３０年までに目指す、全医療機関が情報共有サービスにつながる未来。その最先端を走る施設として、次世代により良い医療環境を残していくことが私たちの使命です。
マイナンバーカード（マイナ保険証）によるオンライン資格確認システムを活用し、患者さんが異なる医療機関を受診しても同一IDで管理されることで、標準化されたレセプト（診療報酬明細）データの自動確認や公費負担・患者負担額の即時判定を実現しています。災害時には国に集約された標準化レセプト情報をマイナンバーで照会することで、カルテがなくても患者の基本的な医療情報や処方薬を把握でき、適切なトリアージや診療判断を可能にする体制の構築も進められています。
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