みんなではじめるSDGs

SDGs:Sustainable Development Goals

Vol.02 「共有」することで、都市空間の移動や利用を持続可能に

中日新聞「みんなではじめるSDGs」では
各分野でSDGsを実践される方たちにリレーインタビューを行います。
今回は名古屋市自転車利用課長 松村豊重さんに、
自転車という身近な乗り物が描く、持続可能なまちの姿をお聞きしました。


名古屋市緑政土木局路政部自転車利用課長
松村 豊重氏

放置自転車対策から「利用環境の向上」へ
ー名古屋市の自転車行政の出発点を教えてください。
 放置自転車の対策が出発点でした。昭和50年頃から社会問題化し、ピーク時は市内に6万4000台もの自転車が路上にあふれ、通行障害を引き起こしていました。そこで、駅前への放置禁止区域の指定や駐輪場の有料化により削減に努めてきました。特に放置の多い栄地区においては、地域の方々と10年以上話し合いを重ねた結果、令和5年度に放置禁止区域の指定と駐輪場の有料化を実現することができました。これらの取り組みの成果として、現在はピーク時の20分の1以下にまで減少しています。
ー政策の重点はどのように変わったのでしょうか。
  平成23年に「自転車は原則車道」という交通ルールの通達が出されたことを機に、車道への通行空間の整備が本格化しました。自転車通行帯等の整備は、安全確保だけでなく「自転車も都市交通を支える存在である」というメッセージでもあります。本市では、放置対策が進んだことに伴い、今後は自転車が安全かつ適正に走行できる環境づくりが、次のステージに進む鍵となっています。

ーシェアサイクルの普及が進んでいますね。
  平成20年度から先進的な取り組みとして大学やNPO等と社会実験を行いましたが、当時は技術的な課題がありました。その後、スマホによる決済や個人認証が普及し、共有文化が広がる土台が整いました。本市の事業は民間主体で進めており、事業者への支援策として令和2年から公共空間をポート用地として提供したことも後押しとなり、現在は4社・2000ポート規模にまで拡大しています。

市役所前に整備された公共シェアサイクルポート

価値観の転換がSDGsを推進
ー自転車政策をSDGsの観点でどう捉えていますか。
 シェアサイクルは「所有から共有へ」という価値観の転換を促し、限られた都市空間を持続可能に使うというSDGsの理念と深く結びついていると考えています。
ー安全面の課題にはどう向き合っていますか。
 最近話題となっている自転車の「青切符」については、交通ルールの運用を現実的なものとし、「ルールを社会全体で共有するための仕組み」として導入されたものと受け止めています。
 そうしたルールとともに大切なのは、歩行者、自転車、車が互いを尊重し合う〝共通の安全文化〞を街に根づかせることです。通行空間や駐輪場の整備も、単なる物理的な整備にとどまらず、「ここを走れば安全に共存できる」というメッセージの可視化でもあります。電動キックボードなど新しいモビリティが増える中で、名古屋が目指すのは「誰もが安全に安心して移動できる都市」の実現です。そのために「ルールをみんなで守る」とともに、「移動スタイルの多様性を認め、道路空間を分かち合う」意識を社会全体で育んでいきたいと考えています。